LE SSERAFIMの絶え間ない進化:「HOT」アルバムと「Come Over」を通じて見た芸術的挑戦とアイデンティティ探求
LE SSERAFIMの絶え間ない進化:「HOT」アルバムと「Come Over」を通じて見た芸術的挑戦とアイデンティティ探求
皆さん、K-POPグループといえば、確立された世界観の中で安定した活動を続けるイメージがありませんか? それも安心感がありますが、LE SSERAFIMはその常識を覆します。
こんにちは! K-POPシーンを見ていると本当に面白いですよね。多くのグループが特定のコンセプトを守ってファン層を固める中、LE SSERAFIMは際立っています。カムバックごとに新しい音楽、ビジュアル、テーマを恐れずに提示し、全く異なる雰囲気さえも自分たちのものにしてしまう。その能力こそが彼女たちの魅力です。5枚目のミニアルバム「HOT」と収録曲「Come Over」は、まさにその進化を象徴しています。
1. コンセプト変遷:「FEARLESS」から「HOT」へ
LE SSERAFIMの初期を覚えていますか? グループ名(「IM FEARLESS」のアナグラム)が示す通り、「恐れを知らない」自己確信が彼女たちの原点でした。「FEARLESS」、「ANTIFRAGILE」、「UNFORGIVEN」と続く「Fearless Trilogy」では、世間の視線に動じず自分たちの道を突き進む強い意志を表明。完璧さを追求し、試練を通じて成長する、ある種、冷徹で強靭なイメージを築き上げました。デビュー過程のドキュメンタリーなどで語られたメンバーの実体験とも結びつき、そのメッセージには説得力がありましたよね。彼女たちは、揺るぎない強さと完璧なパフォーマンスというアイデンティティを確立していきました。
しかし、2024年2月の「EASY」で大きな転換点が訪れます。それまでの完璧な姿の裏にある不安や努力を、彼女たちは率直に語り始めたのです。「血、汗、涙」という言葉で舞台裏の苦労を明かし、「Easy」に見えるものが決して簡単ではなかったことを告白しました。音楽的にも変化が見られ、タイトル曲「EASY」はトラップとR&Bを融合させ、「Swan Song」ではアコースティックなサウンドで柔らかさを表現。メンバーが作詞に参加し、より人間的な側面を見せたことで、ファンとの共感が深まりました。これは「恐れを知らない」という核を捨てるのではなく、真の強さとは弱さを認めることも含めて克服していく過程にある、という形でアイデンティティを拡張したと言えるでしょう。続く「CRAZY」(2024年8月)では、この率直さを土台に、瞬間の感情に没入する解放感を表現し、進化の流れを確かなものにしました。純粋な強さから、多層的な人間味へと、見事な変遷を遂げたわけです。
2. 「HOT」アルバム分析:テーマ転換とタイトル曲
「EASY」と「CRAZY」を経て、2025年3月にリリースされた5thミニアルバム「HOT」は、LE SSERAFIMの物語に新たなページを加えました。驚くべきことに、今回の中心テーマは「愛」 です。これはデビュー以来、タイトル曲で初めて「愛」を正面から扱った試みであり、これまでの目標志向的でクールなメッセージからの大きな転換と言えます。「私が私として生きられるなら、灰になっても私はいい」といった歌詞に象徴されるように、アルバムは愛にすべてを捧げ、結果を恐れずに情熱的に突き進む姿を描いています。これは単なるロマンスではなく、愛という感情の前でも主体的で堂々とした、まさにLE SSERAFIMらしい「Fearless」な愛の形を提示しています。愛への没入と自己決定権を同時に強調するのです。
この「HOT」は、「EASY」での内面の不安の告白、「CRAZY」での狂気的な解放感を経て、最終的に「HOT」な情熱へと到達する感情の三部作の完結編とも位置づけられます。自己探求の旅が、燃えるような愛という形で一つのクライマックスを迎えたと言えるでしょう。タイトル曲「HOT」は、ロックとディスコの要素が加わったポップジャンル。以前の力強い楽曲とは異なり、叙情的でメロディックなアプローチが取られています。メンバーのホ・ユンジンが制作に参加している点も、パーソナルなタッチを加えていますね。
時代区分 / 三部作フェーズ
中心テーマ / メッセージ
「Fearless Trilogy」 (FEARLESS, ANTIFRAGILE, UNFORGIVEN)
揺るぎない自己確信、試練を通じた強さ、自分自身の道を歩む意志。
「内面吐露 Arc」 (EASY, CRAZY)
内面の不安/努力の表出(「EASY」)、狂気/解放感の受容(「CRAZY」)。
「情熱の Climax」 (HOT)
情熱的で自己決定的な愛。結果を恐れず、激しく没入する姿勢。
しかし、正直なところ、「HOT」に対する評価は少し分かれました。歌詞の情熱は伝わるものの、曲自体が少し単調で短い、ブリッジやクライマックスが弱い、といった意見が見られました。Bサイドトラックのようだ、という声も。特に、ミニマルながら新鮮だった「EASY」と比較すると、やや予測可能に感じられたのかもしれません。もちろん、「メロディーが美しくてキャッチー」「夏の雰囲気にぴったり」といった肯定的な評価も多くありました。音楽の好みは人それぞれですからね!
3. 「HOT」ビジュアル:振り付けとMV分析
楽曲「HOT」への評価は様々でしたが、パフォーマンスとビジュアルは間違いなく「熱」を帯びており、興味深いコントラストを生み出しています。振り付けは、「EASY」のオールドスクールヒップホップや「CRAZY」のヴォーギングのように特定のジャンルに縛られません。むしろ、曲の生々しい感情表現に重点が置かれ、力強さと繊細さが融合した動きで構成されています。強さと脆さの両面を見せるような、そんな感じです。サビの滑らかなムーンウォーク風の動きや、カズハを中心にメンバーが円を描くエンディングなどは特に印象的だと話題になりました。落ち着いたメロディの中でも、エレガントで少しセクシー、そして惹きつける強さを感じさせ、彼女たちのステージ掌握力を示しています。
そして、ヤン・ユナ監督によるミュージックビデオ(MV)ですが、これがまた強烈です。「熱さ」というテーマを、予想外の方法で視覚化しています。心地よい暖かさではなく、息苦しさや不快感を伴う熱さ。低い天井、換気の悪い部屋、魚眼レンズによる歪みなどが、意図的に圧迫感のある閉塞的な雰囲気を作り出しています。眩しいほどの照明、溶けるようなエフェクト、扇風機や室外機といった小道具も、不快な熱気を増幅させる装置として機能しているようです。一部メンバーが純粋な白い衣装を着ているのが、混沌とした背景との間で強烈な対比を生んでいます。
MVの後半では、息苦しい環境から抜け出し、夕暮れの浜辺へと場面が転換します。開放的な空間は解放感を与えますが、そこでも燃える額縁、奇妙な車、溶けるドラマーなど、どこかシュールで不穏な要素が散りばめられています。これは、情熱の破壊的な側面(「灰になっても」)や愛の二面性、あるいはディストピア的な解釈の余地を残しているのかもしれません。以下にMVの主な視覚的要素をリストアップしてみましょう。
閉鎖的空間:低い天井、換気のない部屋など、意図的な圧迫感。
不快な「熱」の表現:強烈な照明、溶けるエフェクト、扇風機、室外機。
視覚的対比:純粋な白い衣装 vs 混沌とした背景、息苦しい室内 vs 開放的な浜辺。
シュールレアリスティック要素:燃える額縁、奇妙な車、溶けるドラマーなど、多義的な解釈を誘う。
魚眼レンズ:歪んだ視覚効果で、不安感や非現実感を強調。
このように、「HOT」のMVは、楽曲のメロディアスさとは対照的な、強烈で時に不快感を与えるビジュアルを駆使しています。この不協和音が、愛の複雑さや情熱の裏に潜む衝動を示唆し、楽曲のメッセージに深みを与えているのです。
4. 「Come Over」分析:レトロコンセプトと反響
さて、「Come Over」について語らずにはいられませんよね? このBサイド曲は、タイトル曲「HOT」に匹敵するほどの注目を集め、LE SSERAFIMの全く異なる一面を見せつけました。イギリスの人気バンドJungleのメンバー、J LloydとLydia Kittoが作曲・プロデュースに参加したというだけで、まず話題になりました。その影響はサウンドにも表れており、ヴィンテージで夢幻的な雰囲気が特徴です。ニュージャズ、ボサノバ、ファンク、ネオソウルといった要素が融合し、60~70年代のレトロなムードを醸し出しています。「ためらわずにこっちに来て、一緒に踊ってこの瞬間を楽しもう!」というシンプルで伝染力のあるメッセージ。アルバムの中で最も明るく、軽快で自由奔放なトラックであり、聴く人を自然とリズムに乗せてくれます。
ビジュアル面でも、レトロコンセプトを完璧に再現しています。水玉模様やメリージェーンシューズといった60年代風の衣装、カールしたヘアスタイル、大胆なメイクアップは、楽曲の雰囲気にぴったりでした。そしてパフォーマンス! これがまた魅力的。ボブ・フォッシーを彷彿とさせるジャズダンスをベースにした振り付けは、ウィットに富み、楽しいエネルギーに満ちています。メンバーが次々と倒れるドミノのようなイントロや、リズム感を生かしたキャッチーなポイントダンスは中毒性抜群。力強いパフォーマンスとはまた違う、柔軟で魅惑的な一面を見せてくれました。Mnet M2のパフォーマンスビデオは、シンプルな赤色の背景とレトロな編集でこの魅力を増幅させ、Google AndroidとのコラボMVでは、レトロな雰囲気と現代技術(Gemini AIの使用)を巧みに融合させ、物語性とトレンド感を加えています。単なる表面的なレトロではなく、時代考証に基づいた洗練された再解釈と言えるでしょう。
もちろん、2分17秒という短さやサビの繰り返し構造に対して、単調さや物足りなさを指摘する声もありましたが、全体的な魅力は否定できません。K-POPで流行している80年代、90年代、Y2Kレトロとは一線を画す、独自のレトロ解釈が成功した事例です。
5. 大衆・評論家の反応と「挑戦」の意味
LE SSERAFIMの進化の道のりは、商業的な成功と批評家からの賛否両論を伴ってきました。「EASY」アルバムは初動売上78万枚以上を記録し、日韓のチャートで1位、ビルボード200で8位に入るなど大成功を収めましたが、批評的にはNMEなどが進化を肯定的に評価する一方、IZMなどではサウンドの魅力は認めつつも以前の作品より欠点が多いと指摘されるなど、評価は分かれました。「HOT」アルバムも同様で、NMEはグループの核心的価値に忠実だと評価しましたが、IZMは「Come Over」や「Ash」の魅力は認めながらも、全体的なプロダクションが他のアイドル音楽と類似していると厳しい評価を下しました。特にタイトル曲「HOT」に対しては、短さやインパクト不足を指摘する声が多く、むしろ「Ash」や「Come Over」の方がタイトル曲らしかったという意見も少なくありませんでした。
それでも、多くのファンは彼女たちの絶え間ない変化と挑戦を肯定的に受け止めています。K-POP市場で新しい「挑戦」は、既存ファンの期待を裏切るリスクを伴います。しかし、LE SSERAFIMは変化を恐れません。この姿勢は、時に均質化しているとも言われるK-POPシーンにおいて、彼女たちを際立たせる要因となっています。一方で、この「挑戦」が、メンバー自身の内発的な動機というよりは、事務所の企画による「演出された(performative)」ものだという批判も存在します。似たコンセプトの他グループが経験したような反発を比較的受けていない点が、その根拠とされることもあります。
側面
評価 / 議論のポイント
商業的成功
「EASY」アルバムの売上記録、チャート成績など、高い商業的成果。
批評的評価
メディアによって賛否両論(例:NME vs IZM)。楽曲の完成度や独創性について意見が分かれる。
ファンからの反応
変化への肯定的な受容が多い。特に「Come Over」のようなBサイド曲への高い評価も目立つ。タイトル曲への期待値とのギャップも指摘される。
「挑戦」の真正性
「演出された」挑戦ではないかという批判 vs 変化と消化の「過程」自体が挑戦であり、メンバーの経験反映が真正性を与えるという見方。
しかし、彼女たちの「挑戦」は、システムへの反抗というより、「Fearless」という核を保ちつつ、多様なジャンル(トラップ、R&B、ニュージャズ、ディスコポップ等)とテーマ(強さ、不安、狂気、愛等)を高い完成度で消化していく「過程」そのものにあるのかもしれません。トレンドが目まぐるしく変わる中で、常に新鮮さを提供し続ける努力自体が、K-POPの同質化に対する挑戦と言えるのではないでしょうか。「EASY」で見せた内面の吐露のように、メンバーの経験を反映させる試みは、その挑戦に説得力を持たせています。
6. LE SSERAFIMの差別化要因
では、LE SSERAFIMが他のグループと一線を画す点はどこにあるのでしょうか? それは、いくつかの要素が組み合わさることで生まれています。まず、「Fearless」という明確なアイデンティティを持ちながらも、それを固定せず、多様なテーマやサウンドを包み込む柔軟な核心 があります。次に、どんなコンセプトも高いレベルのパフォーマンスと振り付けで消化し、視覚的な満足度を高める圧倒的なパフォーマンス力 。アルバムごとに目を引くMVとビジュアルコンセプトを提示し、常に話題性を維持する力 も欠かせません。
さらに、強さだけでなく、内面の不安や脆弱性、愛の情熱といった人間的な感情を幅広く扱う ことで共感を広げています。メンバーの実体験や成長をグループの物語と結びつけ、楽曲制作への参加などを通じて叙事的な真正性を追求 する姿勢も見られます。そして、「Smart」のアフロビートや「Come Over」のレトロのように、トレンドに敏感 でありながら、それを独自に再解釈し、独創性を失わないバランス感覚 も重要です。
これらの差別化要因をまとめると、以下のようになります。
柔軟な核心的アイデンティティ(Fearlessの拡張)
圧倒的なパフォーマンス消化能力
魅力的で話題性のあるビジュアルコンセプト
多様なジャンルと人間的テーマへの探求
叙事的な真正性への努力(実体験反映、制作参加)
トレンドと独創性の絶妙なバランス
結論として、LE SSERAFIMの独創性は、確固たるアイデンティティを基盤に絶えず変化を試み、それを高い完成度で実現する能力にあります。強さと脆さ、トレンドと独創性が共存する彼女たちの音楽と物語は、K-POP市場において独自の地位を築いているのです。
よくある質問 (FAQ)
LE SSERAFIMのコンセプト変化がK-POPで際立っている理由は?
多くのグループが安定したコンセプトを維持する中、LE SSERAFIMはアルバムごとに多様なジャンルやテーマ(強さ、不安、情熱など)に果敢に挑戦しています。これらの異なるスタイルを高レベルのパフォーマンスで消化しつつ、「Fearless」という核を維持することで、常に新鮮さを提供し、業界の均質化と見なされる傾向に対抗している点が特徴です。
「HOT」アルバムで導入された主な新しいテーマは何ですか?
「HOT」は、LE SSERAFIMがタイトル曲とアルバムコンセプトの中心テーマとして初めて「愛」を大々的に扱った作品です。これまでの目標志向的なメッセージから離れ、情熱的で激しく、自己決定的な愛を探求し、「EASY」「CRAZY」から続く物語の到達点として位置づけられています。
タイトル曲「HOT」への反応が分かれたのはなぜですか?
評価は様々でした。美しいメロディやキャッチーさ、夏の雰囲気を評価する声があった一方、楽曲自体がやや単調、短い、あるいはクライマックスに欠けると感じた人もいました。以前のタイトル曲と比較してBサイドのようだという意見や、歌詞やビジュアルの強烈さと楽曲の落ち着いた雰囲気にギャップを感じたという指摘もありました。
Bサイド曲「Come Over」がこれほど人気を集めた理由は何ですか?
「Come Over」は、独特な60~70年代のレトロな雰囲気(ニュージャズ、ファンク、ネオソウル等の融合、Jungleメンバーとのコラボ)、明るく陽気なメッセージ、洗練されたサウンドでリスナーを魅了しました。完璧に再現されたレトロなビジュアル(スタイリング、ジャズダンスパフォーマンス)とキャッチーなエネルギーが組み合わさり、グループの新たな一面を見せる standout track となりました。
「EASY」で見せた脆弱性は、LE SSERAFIMの「Fearless」なイメージとどう両立しますか?
矛盾ではなく、「Fearless」なアイデンティティの拡張と見なされています。「EASY」期に強いイメージの裏にある不安や努力を明らかにすることで、真の強さとは弱点を隠すことではなく、それを認め克服する過程にあるというメッセージを伝えました。これにより、彼女たちの物語に深みと共感性が加わりました。
LE SSERAFIMのコンセプト変化は一般的に本物だと見なされていますか?
議論があります。一部には、変化が計画的・「演出的」である可能性を指摘する声もあります。しかし、多くのファンは、多様なコンセプトを一貫して高いレベルで消化していくプロセス自体に真正性を見出しています。さらに、メンバーの経験(ドキュメンタリーや「EASY」期のテーマなど)をコンセプトに結びつけたり、楽曲制作に参加したりすることが、真正性を裏付ける要因とされています。
結論:燃え続けるLE SSERAFIMの炎
LE SSERAFIMの歩みは、まさに「進化」という言葉がふさわしいですね。「Fearless Trilogy」での自己確信から、「EASY」「CRAZY」での内面吐露、そして「HOT」での情熱的な愛の探求へ。タイトル曲「HOT」はメロディとビジュアルの対比で複雑な感情を描き出し、「Come Over」はレトロコンセプトで新たな魅力を振りまき、彼女たちの表現の幅広さを改めて証明しました。
もちろん、すべてのステップが完璧だったわけではなく、コンセプトの真正性や楽曲の完成度について議論があるのも事実です。しかし、重要なのは、彼女たちが常に新しい挑戦を恐れず、それを質の高い芸術作品として提示し続けていること。彼女たちの進化は、単なるコンセプト変更ではなく、「Fearless」という核を絶えず再解釈し、拡張していくプロセスそのものなのです。もしかしたら、時に画一的に見えるK-POPシーンの中で、この止まらない挑戦こそが最も「LE SSERAFIMらしい」姿なのかもしれません。「HOT」のメッセージのように、彼女たちはこれからも自分たちの道で熱く燃え上がり、私たちに刺激とインスピレーションを与え続けてくれるでしょう。次の展開がますます楽しみです!皆さんはどう思いますか?ぜひコメントで聞かせてください!